戦後76年が過ぎた。現在90歳の方でも、終戦時14歳である。戦争体験者がいずれゼロになる日も近い。その時、日本もまた、同じ過ちを犯すのだろうか?
ずいぶん前になるが、第二次世界大戦で陸軍兵士として戦った方と話をしたことがある。既に70歳後半の男性であった。陸軍といえば、終戦間近の時期は、食糧難で大変な苦難を味わったはずである。さぞかし悲惨な目にあっただろうと思いながら話を聞いていた。ところが、この方は非常に明るく話をされるのである。「私が今健康なのは、戦争で重い荷物を担ぎながら、毎日毎日、何キロも戦闘地域を歩き、足腰を鍛えたおかげです」と。何と前向きな考えだろう。勿論、額面通り受け取るわけにはいかない。新兵に対するしごき(暴力)は日常茶飯事であったろうし、行軍することは半端ない苦痛であったはずである。戦争を美化することは感心しないが、どのような苦難も、考え方一つでこうも変わるものだと感じた次第である。他にも、陸軍中野学校を卒業したという方の話も聞いたことがあるが、このような貴重な体験を話してくれる人は、殆ど鬼籍に入られている。